インプラント

高齢者のインプラント治療で気をつけたいトラブルとその対策

高齢者のインプラント治療で気をつけたいトラブルとその対策

高齢者のインプラント、実はトラブルが起こりやすい?

年齢を重ねても、しっかり噛んで食事を楽しみたい。その思いから、インプラント治療を選ばれる高齢の患者さんが増えています。ただ、若い方と比べると高齢者のインプラント治療には注意すべきポイントが多く、思わぬトラブルが起こることもあります。

以下のような悩みをお持ちではありませんか?

「年齢的にインプラントは難しいかも…」

「持病があるけど大丈夫かな?」

「治療後のケアが不安…」

こうした不安を放置すると、インプラント治療の失敗にもつながりかねません。

放置するとどうなる?トラブルがもたらす健康への影響

インプラント

高齢者のインプラント治療で起こりやすいトラブルには、以下のようなものがあります。

インプラントが骨に定着しにくい
→ 骨の質や量が加齢とともに減少し、インプラントの安定が得られにくくなることがあります。

インプラント周囲炎
→ 歯垢や歯石が原因で、インプラント周囲の歯茎に炎症が起きることがあります。

持病との関係
→ 糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などがあると、治癒力が落ち、治療後のトラブルのリスクが高くなります。

口腔内の乾燥
→ 加齢や薬の副作用により、唾液が減って細菌が増えやすくなります。

認知症や身体の不自由さによるセルフケア不足
→ 歯磨きが不十分になることで、インプラント周囲に歯垢がたまりやすくなります。

これらのトラブルを放置すると、インプラントが抜けてしまったり、周囲の骨が溶けたりして、全身の健康にも悪影響を与えるおそれがあります。

高齢者に多い「噛む力の低下」とインプラントの関係

噛む力の低下

年齢とともに「噛む力が弱くなった」と感じる高齢の患者さんは少なくありません。
実はこの“噛む力(咬合力)”の低下も、インプラント治療に影響を与えるポイントのひとつなんです。

なぜ噛む力が弱くなるの?

噛む力が低下する理由には、以下のようなものがあります。

加齢による筋力の低下
→ 特に咬筋や側頭筋など、顎を動かす筋肉が衰えてきます。

長期間の入れ歯生活
→ 入れ歯を使っていると自然な噛みごたえを感じにくくなり、咀嚼習慣が弱まることがあります。

顎関節や歯周組織の退行変性
→ 関節や歯ぐきの組織が年齢とともに変化し、噛む力の伝達がうまくいかなくなることも。

これらが重なると、「せっかくインプラントを入れても思うように噛めない…」といった状況になることもあるのです。

インプラント後は“噛む練習”も大切

インプラントは天然の歯のようにしっかりと骨に固定される構造ですが、使い方に慣れるまでは慎重なリハビリが必要です。

以下のようなステップで「噛む力」を回復させていきましょう。

治療直後は柔らかいものからスタート
→ 最初は豆腐や煮物など、歯に優しい食材を中心に。

少しずつ噛む回数を意識して増やす
→ 一口ごとに「よく噛む」ことを意識するだけで、顎の筋肉が鍛えられます。

リハビリ食や補助食品の活用
→ 高齢の患者さん向けに設計された「嚙む力を引き出す食材」なども利用価値があります。

専門家のアドバイスを受ける
→ 咀嚼訓練や嚥下指導を行っている歯科医院や栄養士に相談するのも効果的です。

噛めるようになると、身体全体も元気に!

「噛めるようになる=食べられるものが増える」ということ。
それは、栄養バランスの改善だけでなく、脳への刺激や運動機能の維持にもつながります。

  • 食べ物の選択肢が増え、食事が楽しくなる
  • 顎を使うことで、脳が活性化される
  • 姿勢や発音も安定しやすくなる

つまり、噛む力は「お口の機能」だけじゃなく、高齢者の生活の質全体に深く関係しているんです。

インプラントは、失った歯を補うだけではなく、「噛む力を取り戻すきっかけ」にもなります。治療後は、歯科医師と一緒にリハビリを進めて、無理なく楽しく使っていける環境を整えていきましょうね。

トラブルを防ぐための5つのポイント

以下のことに注意することで、インプラント治療に伴うトラブルを大きく防ぐことができます。

1. 持病がある場合は、かかりつけ医との連携をとる

薬の影響や全身状態をきちんと把握しておくことで、手術リスクを最小限に抑えます。

2. 骨量・骨質の評価を正確に行う

必要に応じて骨造成などの補助処置を行い、しっかりと固定できる状態に整えます。

3. 十分な術後指導とサポート体制を整える

ご家族の協力や、定期的な健診を通じたフォローが重要です。

4. 歯磨き指導やクリーニングを徹底する

高齢者は歯垢がたまりやすいため、専門的な口腔ケアが不可欠です。

5. 認知症や身体機能の確認を事前に行う

セルフケアが困難な場合は、別の治療法も検討することが望ましいです。

その結果、安心して長く使えるインプラント治療につながります。

高齢者にこそ安心して受けられるインプラント治療を

最近では、高齢者向けのインプラント治療も進化しています。

  • 静脈内鎮静法で負担の少ない手術が可能に
  • 骨造成やショートインプラントなど選択肢が豊富
  • 在宅ケアや通院支援を行う歯科医院も増加中

年齢だけでインプラントをあきらめる必要はありません。「安全に、安心して、しっかり噛める」ための工夫がたくさんあります。

迷っている方へ、まずは相談から始めてみませんか?

高齢だからといって、インプラントをあきらめる必要はありません。ただし、しっかりとした準備とサポート体制があることが前提です。

もしご不安なことがあれば、まずは歯科医院で相談してみましょう。丁寧なカウンセリングを通して、患者さんそれぞれに合った治療法を見つけることができますよ。

まとめ

年齢を理由に、噛む喜びをあきらめないで

高齢者のインプラント治療には、たしかに注意すべきトラブルがいくつかあります。
でも、それは「年齢が問題なのではなく、準備とケアが足りないこと」が原因である場合がほとんどです。

今回ご紹介したポイントをおさらいすると…

  1. 加齢による骨の変化や口腔環境がトラブルの原因になることも
  2. 糖尿病や骨粗しょう症など持病のある方は特に要注意
  3. トラブルを防ぐには、全身状態の確認や術後の丁寧なサポートが欠かせない
  4. 定期的な健診や歯磨きの習慣が、長くインプラントを使うカギ

インプラント治療は、しっかり噛めることで食事の楽しさや生活の質の向上につながる、とても頼もしい選択肢です。年齢を理由に不安になってしまう方も多いですが、しっかり準備すれば、安全に行える治療です。

「やってみたいけど、不安がある」そんなときこそ、まずは歯科医院で相談してみてくださいね。あなたにとって最適な選択が見つかるよう、丁寧にサポートしてくれます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科
院長 竹田 亮

2007年 国立長崎大学歯学部卒業。

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梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック