入れ歯

入れ歯と嚥下(えんげ)の関係性

入れ歯と嚥下(えんげ)の関係性

入れ歯を装着して嚥下(えんげ)がきちんとできるのかという質問がありました。上下の入れ歯が必要な方が初めて入れ歯を装着した場合、上顎のみ装着して練習すること入れ歯を清潔に保つことが大切と言えます。入れ歯と嚥下の関係や入れ歯のお手入れ方法まで詳しくご説明します。

嚥下とはどういう意味?

歯でしっかりとちぎりすりつぶし、小さくなった食べ物を食道から胃などの消化器官へ送る動作が嚥下です。嚥下を行うためには、歯やお口周りの筋肉はもちろん、舌や神経、喉など、数多くの器官が連携して行います。嚥下の機能が低下してしまうと、

  • 誤嚥(ごえん)
  • 低栄養

など嚥下障害の症状が起こってしまいます。

誤嚥

誤嚥とは、唾液や食べ物が本来食道を通して消化器官に送られるべき反射ができず、誤って空気が通る気道に送ってしまうことです。身体が健康な状態ならば、むせたり咳きこんで異物を出すことができますが、嚥下機能が低下しているならばむせることもできず、異物が入ったままの状態になります。むせることができなかった高齢の方は、異物とともに肺に細菌が入ってしまい、それが原因で誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。誤嚥性肺炎は、近年死因の第三位に入る大変怖い病気です。

低栄養

低栄養とは、嚥下機能の低下により食べやすい物・飲みやすい物に飲食が偏り、健康を保つための栄養素が摂取できていない状態です。たんぱく質やエネルギーが維持をするため足りていないと、PEM(Protein energy malnutrition)というたんぱく質・エネルギー欠乏症になります。寝たきりの方はPEMに陥りやすい傾向と言えます。

参照先:厚生労働省

入れ歯の場合の嚥下の注意点

入れ歯を入れれば食べ物を上手に噛めて嚥下ができると思われる方が多いです。もともと嚥下障害のない方は入れ歯を装着しても問題はありませんが、嚥下障害のある方は注意が必要です。その理由として、嚥下反射が難しい方が入れ歯を装着すると誤嚥のリスクが高まるからです。

嚥下には舌の動きが大切

食べ物を飲み込む動作の際に重要なのは舌です。舌を上顎の部分に付けて食べ物を送りますが、入れ歯を上下とも装着すると舌がうまく動かせずに誤嚥することが多いです。嚥下障害があり上下の入れ歯が必要な方は、まず上顎の入れ歯のみを装着して咀嚼し飲み込む練習を行いましょう。

嚥下をしっかりと行うためには、

  • 正しい姿勢で食事をする
  • 食べた直後はすぐ横にならない

この二点を特に気を付けましょう。

入れ歯のお手入れが必要な理由

天然歯でも汚れや歯垢(プラーク)が付着するように、入れ歯を使用すると食べカスや細菌の繁殖によりデンチャープラークと呼ばれる汚れが付着します。入れ歯のお手入れが必要な理由は、このデンチャープラークを除去するためです。

デンチャープラークを除去すると、口腔内での感染リスクや口臭、誤嚥性肺炎のリスクを減らせます。口腔内に常在する細菌が原因で食事をしていなくても、入れ歯に細菌が歯垢として付き、歯石のように固くなってしまいます。

入れ歯を毎日洗浄している人と、洗浄していない人では、肺炎の発症率が1.3倍違うというデータもあります。義歯用のブラシや入れ歯洗浄剤で義歯の汚れを、歯ブラシでお口の中の食べかすや汚れを落とすことが健康を守るうえで大切です。

参照先:東北大学

まとめ


入れ歯を装着する必要がある方は、嚥下がスムーズに行えていたのかという点が重要です。歯がなければ食べ物を噛むことができませんが、嚥下を行えていない方が上下の入れ歯をいきなり使用すると誤嚥を招いてしまいます。加齢により嚥下反射は衰えがちです。歯科医師に相談のうえで、入れ歯の装着については注意しましょう。

参照先:NCBI
この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科
院長 竹田 亮

2007年 国立長崎大学歯学部卒業。

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梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック