
高齢者に多いドライマウスが、最近は若い人ばかりか子供にも増えています。その原因の1つはストレスですが、しかし子供の唾液が少なくなったことには他にも原因がありますのでご説明します。
目次
ドライマウスの症状とは
ドライマウスは口腔乾燥症とも呼ばれ、ストレスや薬の副作用などが原因でお口の中が乾燥した状態になることをいいます。病気の症状の一部として現れることもあり、ドライマウスが進行するとお口の中で細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病を引き起しやすい環境となります。
ドライマウスは一般的に女性に多いといわれており、薬の副作用やストレス・緊張による交感神経の刺激で唾液の分泌量が少なくなることで起こります。
ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスになると虫歯のリスクが上がります。
その理由は、食事をするとお口の中が酸性になることで歯の表面が溶け、(石灰化)、唾液の中のリン酸やカルシウムによって歯の表面が修復されて元に戻る(再石灰化)という再石灰化の作用が、ドライマウスになると行われにくくなるからです。
子供が良く噛まないために唾液が少ない

子供の唾液の分泌が少なくなったもう一つの原因として、よく噛まなくなったことがあげられます。食事の時にしっかり噛むことで、唾液の分泌が促されます。噛んで顎を動かすと、3つの大唾液腺が刺激されるからです。
食べるときにどのぐらい噛むかは、食品の大きさや硬さによって決まります。硬いせんべいはよく噛んで細かくしないと飲み込めませんが、やわらかい絹ごし豆腐などは噛まなくても楽に飲み込むことができます。
一般的に子供の好む食べ物は、よく噛まずに食べられるものが多いように思います。例えばハンバーグやスパゲティー、カレーライスといった食べ物は、あまり噛まなくても飲み込むことが出来ます。
同時にこれらの食べ物は大人の好物でもあります。日本人全体がやわらかいものを好んで食べるようになったともいえるのではないでしょうか。
あまり噛まなで食べる生活を続けていると、顎の骨が発達しません。若い人の顎がほっそりしてきたのは、このことと無縁ではないと考えられます。
昔の人は噛む回数と食事時間が多かった
現代の日本人のかむ回数(咀嚼回数)が減ったことを実証するために、昔の日本人の食事を時代ごとに復元して、それぞれの咀嚼回数と現在の子供の咀嚼回数と食事時間を比較した研究があります(斉藤繁・柳沢幸江「料理別咀嚼回数ガイド」風人社)。
その結果がこちらです。
- 卑弥呼(弥生時代) 咀嚼回数3 990回 食事時間51分
- 源頼朝(鎌倉時代) 2654回 29分
- 徳川家康(江戸初期) 1465回 22分
- 戦前 1420回 22分
- 戦後 620回 1 1分
このように、時代と共に噛む回数も食事時間も少なくなってきていることがわかります。
良く噛んで食べるために、昔から「30回噛んでから飲み込みましょう」といったことがいわれますが、やわらかい食べ物は30回も噛む前にどろどろになって飲み込んでしまいます。噛む回数に関係なく、「咀嚼して飲み込める状態になったら飲み込む」のが普通なのです。
良く噛んで唾液をしっかり出すための食事とは

「30回噛む」というルールをきっちり守るよりも、ゴボウやレンコンなど、かみごたえのある食材をメニューに取り入れる方が実用性はあります。ところが、子供や若い人はかみごたえのある食べ物は好きじゃない傾向にあるようです。
これは高齢者も同じで、歯が悪かったり入れ歯だったりすると噛む力が衰えて噛むことが億劫になるためか、やわらかいものを好む傾向にあります。
確かに、やわらかい方が食べやすいですし、食事の時間も短くてすみます。それが食習慣として定着していくのも不思議ではありません。
やわらかいものを中心とした食生活は、かむ回数を減らすので、唾液の分泌量も減ります。子供や若い人のドライマウスの原因には、この「やわらかいものを好んで食べ、あまり噛まない生活習慣」も関わっていると考えられます。
お茶を飲みながら食事すると唾液が減少する

お茶や水、場合によっては炭酸飲料やコーヒーを飲みながらお弁当を食べている若い人を時々見かけます。よく噛んで唾液が出ていれば、食事中にたくさん水分を取る必要はありません。
しかし噛む回数が少ない人は、唾液の量が少ないので、お茶がないと飲み込みにくいことが考えられます。あるいは、食物をあまり噛まずにお茶で流し込んで、早く食事を終えたいのかもしれません。確かに、お茶を飲みながら食事をしている人は、食事を終えるのが早いように感じられます。
ファーストフードやラーメンはみんな早食い

外食の中でもファーストフードは、ゆっくり味わうことをせずに大急ぎで食べている人が多いです。ファーストフードは、提供されるのが早い(ファースト)ばかりでなく、食べるのも早いという印象です。
ラーメンもまた早食いの人が多く、どんなに長い行列ができているラーメン屋さんでも、1人が食べ終えるまでの時間は男性で5~8分のようです。女性はもう少し長くかかります。
ラーメンは伸びると食感が悪くなるので早く食べるという理由もありますが、スープがあるので、飲み込むようにして食べることができます。唾液が少なくても食べられるのです。
このような早食いが習慣になると、咀嚼力が衰えていきます。咀嚼力とは噛む力のことで、この力が衰えると、かみごたえのあるものを噛んで食べるのが億劫になって、柔らかい食べ物を選ぶという悪循環に陥ります。
まとめ

唾液の分泌が減少して口の中が乾燥すると、細菌が繁殖して虫歯や歯周病や口臭を引き起こす原因になります。特に子供のドライマウスの場合は、食生活に原因があることが多く、よくかむ食事を取り入れる工夫をすることで唾液の分泌が増え、ドライマウスが改善されます。