親知らずを抜くべきでしょうか?親知らずの抜歯について

梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 竹田 亮

親知らずは抜くべき?

親知らずは、すべて抜かなければならないわけではありません。まっすぐ生えて上下の歯が噛み合っており、歯磨きができている親知らずは、そのまま残せることがあります。一方、歯茎の腫れや痛みを繰り返している場合や、親知らずの影響で手前の歯が虫歯になっている場合は、抜歯を検討した方がよいでしょう。

親知らずを抜くかどうかは、「痛いかどうか」だけでは決められません。親知らずの向き、周囲の歯茎の状態、手前の歯への影響、神経との距離などを診察や画像検査で確認したうえで判断します。

日本口腔外科学会も、親知らずが正常に生えて機能している場合などは、必ずしも抜歯する必要はないと説明しています。

詳しくはこちら:親知らずについて 口腔外科相談室(日本口腔外科学会)

この記事を読むとわかること

  1. 親知らずを抜いた方がよいケース
  2. 親知らずを抜かなくてもよいケース
  3. 痛くない親知らずを抜歯することがある理由
  4. 横向き・斜めの親知らずの判断基準
  5. 親知らずを抜かずに放置するリスク
  6. 親知らずの抜歯にかかる費用や通院回数
  7. 抜歯を急いで検討した方がよい症状

親知らずの状態は、見た目だけではわからないことがあります。「痛くないから問題ない」「横向きだから必ず抜く」と自己判断せず、歯科医院で状態を確認することが大切です。

 

目次

親知らずとはどのような歯?

親知らず

親知らずは、前歯から数えて8番目に位置する最も奥の永久歯です。正式には「第三大臼歯」、歯科では「智歯」とも呼ばれます。すべての人に4本生えるとは限らず、骨の中に埋まったままの人や、もともと親知らずがない人もいます。

親知らずは、一番奥に生える個人差の大きな永久歯です。

親知らずは、一般的に10代後半から20代前半ごろに生えてきます。ただし、生えてくる時期には個人差があり、30代以降に一部が見えてくることもあります。

上下左右に1本ずつ、合計4本存在する可能性がありますが、必ず4本すべてが生えるわけではありません。次のような状態があります。

親知らずの様々な生え方・埋まり方

1. まっすぐ生えている

一般的な奥歯と同じように、歯茎から全体が出ている状態です。上下で噛み合い、清潔に保てていれば、奥歯として機能することがあります。

2. 斜めに生えている

手前の歯に向かって傾いている状態です。親知らずと手前の歯の間に汚れがたまりやすく、虫歯や歯茎の炎症につながることがあります。

3. 横向きに埋まっている

歯が横を向いたまま、顎の骨や歯茎の中に埋まっている状態です。下顎の親知らずに多くみられます。

4. 一部だけ歯茎から出ている

親知らずの一部分だけが見えている状態です。歯と歯茎の間に歯垢や食べ物が入り込みやすく、腫れを繰り返す原因になります。

5. 完全に骨の中に埋まっている

お口の中からは見えず、レントゲン撮影によって初めて確認できる場合があります。

親知らずは最も奥に位置するため、生える場所が不足しやすく、斜めや横向きになったり、一部だけ生えたりすることがあります。日本口腔外科学会も、親知らずでは骨の中に埋まった状態や、生える方向の異常が比較的多いと説明しています。

親知らずを抜くかどうかは何を基準に判断する?

親知らずを抜くかどうかは、生えている向きだけではなく、痛みや腫れの有無、歯磨きのしやすさ、手前の歯への影響、将来トラブルを起こす可能性などを総合して判断します。

抜歯の判断で大切なのは、親知らずが周囲に悪影響を与えているかどうかです。

親知らずがあるという理由だけで、すぐに抜歯するわけではありません。反対に、現在痛みがないからといって、必ず残せるとも限りません。

歯科医院では、主に次の点を確認します。

  • 親知らずがまっすぐ生えているか
  • 上下の親知らずが正常に噛み合っているか
  • 歯ブラシが届き、清潔に保てているか
  • 親知らずや手前の歯が虫歯になっていないか
  • 歯茎の腫れや痛みを繰り返していないか
  • 手前の歯の根や骨に影響が出ていないか
  • 親知らずの周囲に袋状の病変がないか
  • 下顎の神経と親知らずの根が近くないか
  • 患者さんに持病や服用中の薬がないか

親知らずの状態を判断するうえでは、親知らずそのものだけでなく、手前にある大切な奥歯を守れるかという視点が重要です。

親知らずを無理に残した結果、手前の健康な歯が深い虫歯になれば、親知らずだけではなく、噛むために重要な奥歯まで治療が必要になることがあります。

次の表は、親知らずを抜く場合と経過観察できる場合の一般的な目安です。実際の判断は、レントゲンや必要に応じたCT検査を行い、患者さんごとの状態を確認したうえで行います。

親知らずの状態 一般的な判断
まっすぐ生え、正常に噛み合っている 経過観察できることがあります
歯磨きができ、虫歯や炎症がない 経過観察できることがあります
歯茎の腫れや痛みを繰り返している 抜歯を検討します
親知らずや手前の歯が虫歯になっている 治療または抜歯を検討します
手前の歯の根や骨に悪影響がある 抜歯を検討します
横向き・斜めで清掃が難しい 将来のリスクを含めて判断します
骨の中に埋まり、周囲に異常がない 定期的に経過観察することがあります

表はあくまで一般的な判断の目安です。横向きでも問題がなく経過観察する場合があれば、まっすぐ生えていても深い虫歯や炎症があれば抜歯を検討することがあります。

親知らずの向きだけを見て決めるのではなく、「現在の問題」と「将来予想される問題」の両方を考えて判断することが大切です。

親知らずを抜いた方がいいのはどのような場合?

 

親知らずの周囲が何度も腫れる場合や、虫歯、歯周病、手前の歯への悪影響が確認される場合は、抜歯を検討します。症状が一時的に治まっても、原因となる生え方や清掃の難しさが変わらなければ、再発することがあります。

繰り返す炎症や周囲の歯への悪影響がある場合は、抜歯を検討します。

歯茎の腫れや痛みを繰り返している場合

親知らずの一部だけが歯茎から出ていると、歯と歯茎の間に歯垢や食べ物が入り込みやすくなります。その結果、親知らずの周囲に炎症が起こることがあります。

この状態は「智歯周囲炎」と呼ばれます。

炎症が軽い段階では、親知らずの周囲を洗浄したり、薬を使用したりすることで症状が治まることがあります。しかし、斜めに生えている、歯磨きが届かないといった原因が残っている場合、腫れや痛みを繰り返す可能性があります。

何度も炎症を繰り返している場合は、症状が落ち着いた時期に抜歯を検討します。

親知らずが虫歯になっている場合

親知らずはお口の一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくく、虫歯になりやすい歯です。

小さな虫歯で、まっすぐ生えており、今後も十分に歯磨きできる場合は治療して残せることがあります。一方、治療器具が届きにくい位置にある場合や、深い虫歯になっている場合は、詰め物や被せ物による治療が難しく、抜歯を選択することがあります。

手前の歯が虫歯になっている場合

斜めや横向きの親知らずは、手前にある7番目の奥歯と接触することがあります。接触部分には歯垢が残りやすく、手前の歯の側面に虫歯ができることがあります。

この虫歯は歯と歯の間の見えにくい場所にできるため、痛みが出るまで気づかないことも少なくありません。

親知らずを残すことで手前の歯の治療が難しくなる場合は、手前の健康な歯を守るために親知らずの抜歯を検討します。

手前の歯の根が影響を受けている場合

親知らずが手前の歯の根に強く接触していると、まれに手前の歯の根が吸収されることがあります。

歯根吸収が進むと、手前の歯を残すことが難しくなる可能性があります。痛みがないまま進行することもあるため、レントゲンによる確認が必要です。

親知らずの周囲に嚢胞がある場合

骨の中に埋まっている親知らずの周囲に、「嚢胞」と呼ばれる袋状の病変ができることがあります。

嚢胞が小さいうちは自覚症状がない場合もありますが、大きくなると顎の骨を圧迫したり、周囲の歯に影響を与えたりすることがあります。そのため、親知らずとともに嚢胞を取り除く処置が必要になる場合があります。

噛み合う相手がいない場合

上の親知らずだけ、または下の親知らずだけが生えている場合、噛み合う相手がいないため、歯が少しずつ伸びてくることがあります。

伸びた歯が反対側の歯茎に当たると、傷や痛みの原因になります。噛む機能に役立っておらず、周囲に悪影響を与えている場合は、抜歯を検討します。

矯正治療やほかの治療に支障がある場合

矯正治療の計画や、奥歯の移動、手前の歯の治療などに親知らずが影響する場合、治療前または治療途中に抜歯を検討することがあります。

ただし、「矯正治療をするなら親知らずを必ず抜く」というわけではありません。親知らずの位置や矯正治療の方法によって判断は異なります。

親知らずを抜かなくていいのはどのような場合?

親知らずがまっすぐ生え、正常に噛み合い、十分に歯磨きできている場合は、抜歯せずに残せることがあります。また、骨の中に完全に埋まっていて周囲に異常がない場合も、定期的に状態を確認しながら経過を見ることがあります。

正常に機能し、周囲に問題を起こしていなければ、親知らずを残せる場合があります。

まっすぐ生えて正常に噛み合っている場合

親知らずがほかの奥歯と同じようにまっすぐ生え、上下の歯が正常に噛み合っていれば、噛むための歯として利用できます。

虫歯や歯周病がなく、継続的に管理できる場合は、親知らずという理由だけで抜歯する必要はありません。

歯ブラシが届き、清潔に保てている場合

親知らずがまっすぐ生えていても、歯磨きができなければ、将来的に虫歯や歯周病になる可能性があります。

反対に、一番奥まで歯ブラシやタフトブラシが届き、歯垢を除去できている場合は、定期的に状態を確認しながら残せることがあります。

骨の中に完全に埋まり、周囲に異常がない場合

親知らずが骨の中に完全に埋まっており、お口の中とつながっていない場合、細菌が入り込んで炎症を起こす可能性は比較的低いと考えられます。

ただし、骨の中で嚢胞ができることもあるため、「見えないから問題ない」とは限りません。定期的なレントゲン撮影で、大きな変化がないか確認することが大切です。

将来の治療に利用できる可能性がある場合

健康な親知らずは、将来、手前の奥歯を失った際にブリッジや入れ歯を支える歯として利用できることがあります。

条件が合えば、失った奥歯の場所へ親知らずを移植できる可能性もあります。ただし、すべての親知らずを利用できるわけではなく、歯根の形や大きさ、移植先の状態、患者さんの年齢などを確認する必要があります。

親知らずを残せる可能性がある場合でも、定期的な管理は必要です。
次の表に、親知らずを残す場合に確認したい条件をまとめます。

確認するポイント 残せる可能性が高い状態
生えている向き ほかの奥歯と同じように、ほぼまっすぐ生えている
噛み合わせ 上下の歯が噛み合い、奥歯として機能している
清掃状態 歯ブラシやタフトブラシが届き、清潔に保てる
虫歯・歯周病 親知らずと手前の歯に問題がない
周囲の骨や歯根 嚢胞や歯根吸収などの異常がない
定期管理 歯科医院で継続的に状態を確認できる

親知らずを残す判断は、「今は痛くない」という一点だけではなく、今後も清潔に保ち、周囲の歯を守れるかどうかを含めて行います。残した親知らずに変化が起きていないか、歯科健診で定期的に確認しましょう。

痛くない親知らずも抜いた方がいい?

痛みがなくても、手前の歯の虫歯、歯根吸収、嚢胞などが画像検査で見つかった場合は、抜歯を検討することがあります。一方、症状も画像上の異常もなく、将来的なリスクが低いと判断されれば、経過観察できる場合があります。

痛くないことだけでは、抜歯が不要とは判断できません。

親知らずについて、「痛みが出たら歯科医院へ行こう」と考えている方は少なくありません。しかし、親知らずによる問題の中には、痛みがないまま進行するものがあります。

たとえば、横向きの親知らずと手前の歯の間に虫歯ができても、初期段階ではほとんど症状がありません。骨の中に嚢胞ができた場合も、ある程度大きくなるまで気づかないことがあります。

そのため、痛みがない親知らずでは、次の点を確認します。

  1. 手前の歯との間に虫歯がないか
  2. 手前の歯の根が吸収されていないか
  3. 親知らずの周囲に嚢胞がないか
  4. 歯茎の奥に深い汚れがたまっていないか
  5. 将来的に歯磨きが難しくなる位置ではないか
  6. 親知らずの根と神経がどの程度近いか

異常がなければ、すぐに抜かず、定期的に経過を見る選択肢があります。一方、周囲への悪影響がすでに始まっている場合は、症状が強くなる前に抜歯した方が、手前の歯を守りやすいことがあります。

「痛くなるまで待つ」という考え方ではなく、痛みが出る前に状態を知っておくことが大切です。

横向き・斜めの親知らずは必ず抜く?

横向きや斜めの親知らずでも、必ず抜歯するわけではありません。ただし、手前の歯との間に汚れがたまりやすく、虫歯や炎症、歯根吸収などを起こす可能性があるため、まっすぐ生えた親知らずより慎重な確認が必要です。

横向きという理由だけでなく、周囲への影響を見て抜歯を判断します。

横向きや斜めの親知らずは、特に下顎で多くみられます。

親知らず全体が骨の中に埋まっている場合もあれば、頭の一部だけが歯茎から見えている場合もあります。問題が起こりやすいのは、一部だけが出ていて、お口の中の汚れが歯茎の奥に入り込む状態です。

横向き・斜めの親知らずで確認するポイント

  1. 腫れや痛みを繰り返していないか
  2. 手前の歯との間に虫歯がないか
  3. 手前の歯の根に影響していないか
  4. 親知らずの周囲に深い歯周ポケットがないか
  5. 嚢胞などの病変がないか
  6. 下顎の神経と歯根が近くないか

異常がなく、完全に骨の中に埋まっている場合は、定期的に画像検査を行いながら経過を見ることがあります。

一方、一部だけ歯茎から出ていて炎症を繰り返す場合や、手前の歯に悪影響がある場合は、抜歯を検討します。

親知らずを抜かずに放置するとどうなる?

問題のある親知らずを放置すると、腫れや痛みを繰り返すだけでなく、親知らずや手前の歯の虫歯、歯周病、口臭、嚢胞などにつながることがあります。ただし、すべての親知らずに問題が起こるわけではありません。

放置することで起こる問題は、親知らずだけでなく手前の健康な歯まで傷める可能性があることです。

歯茎の腫れや痛みを繰り返すことがある

  • 親知らずの周囲に歯垢がたまり続けると、体調を崩したときや疲れがたまったときに炎症が悪化することがあります。
  • 腫れが強くなると、口を開けにくい、食事がしにくい、飲み込みにくいといった症状が出ることもあります。

親知らずが虫歯になることがある

  • 親知らずは歯ブラシが届きにくいため、虫歯ができても気づきにくい場所です。
  • 深い虫歯になると、強い痛みが出たり、周囲の歯茎が腫れたりすることがあります。

手前の奥歯まで虫歯になることがある

  • 斜めの親知らずと手前の歯の間に汚れがたまると、両方の歯が虫歯になることがあります。
  • 手前の7番目の奥歯は、食べ物を噛むうえで重要な歯です。親知らずを残したことで手前の歯を大きく削ることになれば、お口全体にとって大きな損失になります。

歯周病や口臭につながることがある

  • 親知らずの周囲に歯垢や食べ物が残ると、歯茎の炎症や口臭の原因になることがあります。
  • 歯磨きをしても同じ場所から出血する、奥歯の周囲から嫌な味がするという場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。

嚢胞が大きくなることがある

  • 骨の中に埋まった親知らずの周囲に嚢胞ができると、顎の骨の中で少しずつ大きくなることがあります。
  • 症状がないまま進行することもあるため、埋まっている親知らずでも、必要に応じて画像検査による経過観察を行います。

問題がない親知らずまで、将来を心配して一律に抜く必要はありません。しかし、すでに周囲へ悪影響が出ている親知らずを放置することにも利点はありません。

「残すか抜くか」だけでなく、残すならどのように管理するかまで考えることが重要です。

親知らずを抜くメリット・デメリットは?

問題のある親知らずを抜くと、炎症の再発や手前の歯への悪影響を防ぎやすくなります。一方、抜歯には腫れ、痛み、出血、神経への影響などのリスクがあります。抜歯の必要性と処置の難易度を比較して判断します。

抜歯には将来のトラブルを減らす利点がありますが、処置に伴う負担もあります。

親知らずを抜くメリット

  1. 歯茎の腫れや痛みの再発を防ぎやすくなる
    → 炎症の原因となる親知らずを取り除くことで、同じ場所の腫れや痛みを繰り返す可能性を減らせます。
  2. 手前の歯を守りやすくなる
    → 親知らずとの間に汚れがたまる状態を解消し、手前の奥歯の虫歯や歯周病を防ぎやすくします。
  3. 奥歯の歯磨きがしやすくなる
    → 斜めに生えた親知らずがなくなることで、手前の歯の後ろ側まで歯ブラシを当てやすくなることがあります。
  4. 将来の急な痛みや腫れのリスクを減らせる
    → 仕事、試験、妊娠、留学などの大切な時期に炎症が起こるリスクを減らすことにつながります。

これらのメリットは、問題を起こしている親知らずを抜いた場合に期待できるものです。正常に機能している親知らずまで抜けば、必ず大きな利益が得られるわけではありません。

親知らずを抜くデメリット

  1. 抜歯後に痛みや腫れが出ることがある
    → 特に下顎の横向きの親知らずでは、歯茎の切開や骨を削る処置が必要になることがあり、腫れが目立つ場合があります。
  2. 抜歯後に出血することがある
    → 抜歯当日は少量の出血が続くことがあります。強いうがいを繰り返すと、傷口を守る血の塊が取れてしまうことがあるため注意が必要です。
  3. ドライソケットが起こることがある
    → 抜歯した穴に血の塊が十分に残らず、骨が露出した状態になると、数日後から強い痛みが出ることがあります。
  4. 下顎の神経に影響する可能性がある
    → 下顎の親知らずの根が神経に近い場合、抜歯後に唇や顎のしびれが生じる可能性があります。
  5. 上顎洞とつながってしまうことがある
    → 上の親知らずの根が鼻の横にある空洞と近い場合、抜歯後にお口と上顎洞がつながることがあります。その場合、口に含んだ液体が鼻から漏れる、蓄膿症のような炎症が起きる、口から空気が抜ける等が起こります。

抜歯には一定のリスクがあるため、「いつか問題になるかもしれない」という理由だけで処置するのではなく、抜歯によって得られる利点が負担やリスクを上回るかを検討します。

親知らずの抜歯前にはどのような検査をする?

親知らずの抜歯前には、お口の中の診察とレントゲン撮影を行います。下顎の神経との距離や歯根の形をより詳しく確認する必要がある場合は、歯科用CTを撮影することがあります。

親知らずの位置と周囲の組織を確認してから、安全性を考慮して抜歯します。

お口の中を確認する

  • 親知らずがどの程度見えているか、周囲の歯茎に腫れがないか、歯磨きができているかを確認します。
  • 親知らずだけでなく、手前の歯の虫歯や歯周病の状態も調べます。

パノラマレントゲンを撮影する

  • パノラマレントゲンでは、上下左右の親知らずの位置や向き、顎の骨、手前の歯との関係などを広い範囲で確認できます。
  • お口の中から見えない親知らずも、レントゲンによって状態を把握できます。

必要に応じて歯科用CTを撮影する

  • 歯科用CTでは、親知らずの位置を立体的に確認できます。
  • 特に、下顎の親知らずの根が神経の通り道に近いと考えられる場合や、歯根の形が複雑な場合に役立ちます。

すべての親知らずの抜歯でCT撮影が必要なわけではありません。通常のレントゲンだけでは十分に確認できない場合に検討します。

親知らずは何歳までに抜いた方がいい?

親知らずの抜歯に一律の年齢制限はありません。ただし、一般的には若い時期の方が骨に柔軟性があり、傷口が治りやすい傾向があります。必要な親知らずを将来まで放置するのではなく、状態が悪化する前に相談することが大切です。

年齢だけで決めず、必要性がある場合は状態のよい時期に抜歯を検討します。

「親知らずは若いうちに抜いた方がいい」と聞いたことがある方もいるでしょう。

一般的には、年齢が若い時期の方が、歯を支える骨が比較的柔らかく、抜歯後の治癒も早い傾向があります。年齢が上がると骨が硬くなったり、持病や服用薬が増えたりするため、処置の前に確認すべき点が多くなることがあります。

ただし、若いからという理由だけで、正常な親知らずをすべて抜く必要はありません。

抜歯の時期は、次の点を考えて決めます。

  • 親知らずが現在問題を起こしているか
  • 将来、手前の歯に影響する可能性が高いか
  • 歯根が完成しているか
  • 神経との距離がどの程度あるか
  • 患者さんの持病や服用薬
  • 仕事や学校を休める時期
  • 妊娠、留学、転居などの予定

年齢そのものよりも、親知らずの状態と患者さんの生活予定を合わせて考えることが大切です。

親知らずの抜歯にはどのような注意点やリスクがある?

親知らずの抜歯は外科処置の一つです。持病や服用薬、親知らずと神経の位置関係などによって注意点が異なります。自己判断で薬を中止せず、治療中の病気や服用薬を歯科医師に伝えてください。

安全に抜歯するためには、全身状態と服用薬の確認が欠かせません。

持病や服用薬を伝える

高血圧、糖尿病、心臓病、肝臓病、腎臓病、血液の病気などがある場合は、抜歯前に歯科医師へ伝えてください。

血液を固まりにくくする薬、骨粗しょう症の薬、免疫を抑える薬などを使用している場合も、処置方法や治療時期を検討する必要があります。

服用薬を自己判断で中止すると、持病が悪化する危険があります。必ず歯科医師と担当医の指示に従いましょう。日本口腔外科学会も、抜歯前には全身疾患や出血に関係する薬の確認が必要だと説明しています。

腫れが強い時期は、すぐ抜けない場合がある

親知らずの周囲に強い炎症があると、麻酔が効きにくかったり、感染が広がったりする可能性があります。

そのため、まず洗浄や薬によって炎症を落ち着かせ、その後に抜歯することがあります。ただし、症状や緊急性によって対応は異なります。

難しい抜歯は口腔外科へ紹介する場合がある

親知らずが深く埋まっている場合や、下顎の神経に近い場合、持病の管理が必要な場合などは、病院や大学病院の口腔外科へ紹介することがあります。

紹介になることは、状態が極端に悪いという意味ではありません。設備や専門的な管理体制が整った施設で、より安全に処置するための選択です。

抜歯前に確認が必要な主な項目を、次の表にまとめます。
該当するものがある場合は、問診の際に歯科医師へ伝えてください。

確認する項目 歯科医師へ伝える内容
持病 高血圧、糖尿病、心臓病、肝臓病、腎臓病、血液疾患など
服用薬 血液を固まりにくくする薬、骨粗しょう症の薬、免疫を抑える薬など
アレルギー 薬剤、麻酔薬、抗菌薬などによる症状の経験
妊娠・授乳 妊娠週数、妊娠の可能性、授乳中であること
過去の治療 抜歯時の体調不良、麻酔が効きにくかった経験、出血が止まりにくかった経験
当日の体調 発熱、強い疲労、睡眠不足、食事を取れていない状態など

抜歯前には、現在の体調についても確認します。発熱や強い体調不良がある場合は、処置日を変更することがあります。

安全に治療を受けるためにも、「歯とは関係がなさそう」と思う病気や薬についても、漏れなく伝えることが大切です。

親知らずの抜歯にかかる費用・期間・通院回数は?

虫歯や炎症など、治療上の必要性がある親知らずの抜歯には、一般的に健康保険が適用されます。費用や処置時間は、生え方、埋まっている深さ、画像検査の内容、薬の処方などによって異なります。

親知らずの抜歯費用と通院回数は、抜歯の難易度によって変わります。

親知らずの抜歯は保険適用になる?

親知らずに虫歯や炎症がある場合、手前の歯に悪影響がある場合など、治療上必要と判断された抜歯には、一般的に健康保険が適用されます。

ただし、矯正治療の都合による抜歯など、抜歯の目的によっては保険適用にならない場合があります。診察時に確認しましょう。

抜歯にかかる時間は?

まっすぐ生えている親知らずであれば、比較的短時間で抜けることがあります。

一方、横向きに埋まっている下顎の親知らずでは、歯茎を切開し、歯を分割したり、一部の骨を削ったりすることがあります。そのため、処置時間が長くなる傾向があります。

麻酔の時間や止血の確認も必要になるため、当日は時間に余裕を持って受診しましょう。

通院は何回必要?

一般的には、次のような流れになります。

  1. 診察とレントゲン撮影
  2. 親知らずの抜歯
  3. 傷口の確認や消毒
  4. 縫合した場合は抜糸

診察当日に抜歯できることもありますが、強い炎症がある場合、CT検査が必要な場合、口腔外科への紹介が必要な場合などは、別日に処置を行います。

抜歯後の腫れや痛みは何日続く?

抜歯後の腫れや痛みには個人差があります。

まっすぐ生えた上の親知らずでは、腫れが比較的少ないことがあります。下顎の横向きの親知らずでは、処置後2~3日程度を中心に腫れが目立ち、その後少しずつ落ち着くことがあります。

痛みや腫れが日ごとに強くなる場合、出血が止まらない場合、発熱や膿がある場合は、抜歯を受けた歯科医院へ連絡してください。

次の表は、親知らずの抜歯にかかる期間や通院回数の一般的な目安です。実際の流れは、親知らずの生え方や全身状態、歯科医院の診療体制によって異なります。

項目 一般的な目安
初回診察 お口の診察、レントゲン撮影、治療方針の説明
追加検査 神経との位置関係などに応じてCT撮影を行う場合があります
抜歯時間 数分で終わる場合から、難しいケースでは時間を要する場合までさまざまです
抜歯後の確認 数日後から1週間程度を目安に傷口を確認することがあります
抜糸 縫合した場合は、約1週間後に行うことがあります
通院回数 診察・抜歯・傷口の確認を含め、2~4回程度になることがあります

費用だけでなく、仕事や学校の予定も考えて抜歯日を決めることが大切です。腫れが予想される難しい抜歯では、大切な予定の直前を避けた方がよいでしょう。

診察を受けたからといって、その日に必ず抜歯しなければならないわけではありません。まず状態と難易度を確認し、生活予定を含めて相談できます。

親知らずを抜かない場合はどうケアする?

親知らずを残す場合は、一番奥まで歯ブラシを届かせ、歯と歯茎の境目や手前の歯との間を丁寧に清掃します。セルフケアだけでは確認できない虫歯や骨の変化もあるため、歯科健診も必要です。

親知らずを残すなら、歯磨きと定期的な画像確認を続けましょう。

歯ブラシを横から入れる

親知らずは奥にあるため、歯ブラシを正面から入れようとしても、頬に当たって毛先が届かないことがあります。

お口を大きく開けすぎず、歯ブラシを頬側から斜めに入れると、親知らずまで届きやすくなります。毛先を小さく動かし、歯と歯茎の境目を丁寧に磨きましょう。

タフトブラシを使う

タフトブラシは、毛先が小さくまとまった部分用の歯ブラシです。

普通の歯ブラシが届きにくい親知らずの後ろ側や、斜めに生えた歯の周囲を磨く際に役立ちます。強い力でこすらず、毛先を当てて細かく動かします。

手前の歯との間を清掃する

親知らずと手前の歯の間に糸ようじや歯間ブラシを通せる場合は、歯科医師や歯科衛生士に適切な使い方を確認しましょう。

無理に器具を押し込むと、歯茎を傷つけることがあります。親知らずの向きによっては自宅での清掃が難しいため、歯科医院で方法を確認することが大切です。

定期的に歯科健診を受ける

親知らずの虫歯や手前の歯への影響は、自分では確認できない場所で進行することがあります。

歯科健診では、歯茎の状態、虫歯、歯磨きの状況などを確認します。必要に応じてレントゲンを撮影し、骨の中に埋まった部分に変化がないかを調べます。

親知らずを残すことは、「何もしない」という意味ではありません。継続的に管理できることが、親知らずを残すための大切な条件です。

親知らずの症状で早めに受診した方がよいのは?

親知らずの周囲が大きく腫れている、口を開けにくい、飲み込みにくい、発熱があるといった場合は、炎症が広がっている可能性があります。症状を我慢せず、早めに歯科医院を受診してください。

腫れが広がる、口が開かない、発熱がある場合は早めの受診が必要です。

次のような症状がある場合は、早めに歯科医院へ相談しましょう。

  • 親知らずの周囲が強く痛む
  • 歯茎や頬が大きく腫れている
  • 口が開けにくい
  • 食べ物や唾液を飲み込みにくい
  • 発熱や強いだるさがある
  • 膿が出る、嫌な味がする
  • 痛み止めを飲んでも強く痛む
  • 腫れや痛みを何度も繰り返している
  • 顎や唇にしびれを感じる

炎症が広がっている場合、すぐに抜歯するのではなく、洗浄や薬による治療を先に行うことがあります。

症状が一度治まっても、親知らずの位置や清掃の難しさが変わらなければ再発する可能性があります。痛みがなくなった時点で通院を中断せず、今後の対応について説明を受けましょう。

親知らずについてのQ&A

Q1.親知らずは4本すべて抜く必要がありますか?

4本すべてを抜く必要はありません。親知らずは1本ずつ状態が異なるため、問題を起こしている歯だけを抜くこともあります。まっすぐ生えて機能している親知らずや、骨の中に埋まり異常がない親知らずは、経過観察できる場合があります。

Q2.痛くない横向きの親知らずは抜くべきですか?

痛みがなくても、手前の歯の虫歯や歯根吸収、嚢胞などがある場合は抜歯を検討します。異常がなく、完全に骨の中に埋まっている場合は、定期的にレントゲンで確認しながら経過を見ることがあります。

Q3.親知らずを抜くと小顔になりますか?

親知らずを抜くことを、小顔にする目的の治療として考えることはできません。抜歯後に腫れが引き、顔周りがすっきりしたように感じることはありますが、親知らずを抜くだけで顎の骨格が大きく変わるわけではありません。

Q4.親知らずがあると歯並びが悪くなりますか?

親知らずだけが原因で、すべての人の歯並びが悪くなるとはいえません。親知らずの向きや位置、噛み合わせ、顎の大きさなどを含めて確認する必要があります。歯並びの変化が気になる場合は、親知らずだけで判断せず、お口全体を診てもらいましょう。

Q5.親知らずが腫れている日に抜歯できますか?

炎症が軽い場合は処置できることもありますが、腫れや感染が強い場合は、先に洗浄や薬で炎症を落ち着かせることがあります。麻酔の効き方や感染の広がりを考慮し、歯科医師が抜歯の時期を判断します。

まとめ

親知らずは、すべて抜く必要がある歯ではありません。正常に生え、噛み合わせに参加し、清潔に保てている場合は残せることがあります。一方、炎症、虫歯、手前の歯への悪影響などがある場合は、抜歯を検討します。

親知らずは「あるかどうか」ではなく、「周囲に問題を起こしているか」で判断します。

親知らずを抜くべきかどうかは、生え方だけで一律に決められません。

抜歯を検討する主なケースは、次のとおりです。

  1. 歯茎の腫れや痛みを繰り返している
  2. 親知らずや手前の歯が虫歯になっている
  3. 手前の歯の根や骨に影響が出ている
  4. 親知らずの周囲に嚢胞がある
  5. 清掃が難しく、将来のトラブルが予想される

反対に、まっすぐ生え、正常に噛み合い、歯磨きができている親知らずは、抜歯せずに残せる場合があります。

大切なのは、痛みが出るまで待つことではなく、現在の状態を確認しておくことです。痛みのない親知らずでも、見えない場所で手前の歯に影響を与えていることがあります。

親知らずを抜くか迷っている方は、まず歯科医院で診察と画像検査を受け、抜歯する利点とリスク、経過観察する場合の管理方法について説明を受けましょう。