矯正歯科

矯正後の後戻りとは? 後戻りの原因や防ぐ方法について

矯正後の後戻りとは? 後戻りの原因や防ぐ方法について

矯正治療後は歯列が後戻りを起こしやすい状態です。歯並びをきれいに整えても後戻りを起こしてしまう場合の原因や予防方法についてご説明します。

歯列矯正後の後戻りとは

「後戻り」とは、矯正治療によって改善された歯並びが、治療前の出っ歯やガタガタの状態に戻ろうとする現象です。矯正治療後は矯正方法に関わらずどなたにも生じる可能性があり、その程度は個人差があります。

後戻りの原因とそのメカニズム

後戻りが起こる理由は、矯正によって歯が移動するメカニズムと密接に関連しています。

歯が動く仕組みとは?

矯正では歯に力をかけることで、歯根膜の繊維が伸び縮みします。歯が動く方向に接している歯根膜は歯が動く力で縮み、縮んだ歯根膜に接している歯槽骨は吸収し(溶け)ます。逆側の歯根膜は伸びて、伸びた方に接している歯槽骨は再生されます。

矯正治療中にはこの歯槽骨の吸収と再生が絶え間なく起こっているため、矯正直後の歯はまだ骨や周囲の細胞の状態が安定しておらず、歯の位置を固定するためには、保定装置(リテーナー)の装着が必要になります。

リテーナーの役割

矯正治療後は、リテーナーを用いた保定期間が必須です。リテーナーを担当医の指示通りに装着することが後戻りを防ぐ鍵となり、リテーナーの使用期間は1~3年に及ぶことが多いです。

リテーナーの種類とその使用方法

リテーナーには様々な形のものがあり、不正咬合の種類等により担当医がどのタイプにするかを選びます。使用期間と方法は治療後の半年~1年間は常時装着し、その後は就寝時や週に数日のみの使用に移行することが一般的です。

後戻りを起こしやすい人の特徴

1. リテーナーを装着していない

矯正治療後にリテーナーを使用しないと、必ずと言っていい程、後戻りが起こります。リテーナーを使用しない、または担当医の指示通りに使用していないことは、後戻りのリスクを高めます。

担当医から指示された期間の使用が必要です。

2. 歯並びを悪化させる習慣を持つ人

歯並びを悪くする癖というものがあります。これが原因で不正咬合を起こしていた場合は、癖を治す必要があります。

  • 指しゃぶり
  • 口呼吸
  • 舌で歯を押す癖
  • 舌を突き出す癖
  • 片側で噛む
  • 爪や唇を噛む
  • 歯ぎしり・食いしばり

このような無意識で行う癖が不正咬合や後戻りの原因となりますので、出来るだけ矯正中にこれらの習慣を改善するようにしましょう。

3. 過去に部分矯正を受けた

部分矯正は一部の歯のみを動かすため、歯列全体のバランスを取ることが難しく、後戻りのリスクが高くなります。

4. 成長段階で矯正治療を受けた

小児矯正を受けた場合、その後の子供の成長によって骨格が変化し、歯列の後戻りを起こすことがあります。子供の成長が完了するまでの間は経過観察が必要です。

5. 矯正治療後に親知らずが生えた

親知らずは、生え方によって抜歯時期が異なります。歯茎に埋まっていた親知らずが矯正治療後に歯を押し始め、歯列を乱す場合もあります。

後戻りを防ぐためには

1. リテーナーの正しい使用

後戻りを起こさないために絶対に必要なのが、リテーナーのリテーナーの適切な使用です。担当医の指示を守ってリテーナーを使い、自己判断で使用頻度を減らしたり、使用をやめないようにしましょう。

2. 定期検診を受ける

矯正治療が終わっても、きちんと定期健診を受け続け、虫歯や歯周病から歯を守ると共に、歯並びの状態のチェックもしてもらいましょう。

後戻りが起こった場合の対処

後戻りの再治療は部分矯正で治療可能な場合が多いです。後戻りの程度によって治療期間や比喩は子とないrます。まず矯正カウンセリングで再治療について相談しましょう。

矯正後の後戻りとは? 後戻りの原因や防ぐ方法についてに関するQ&A

矯正治療後の歯列が後戻りを起こす理由は何ですか?

矯正治療後に歯列が後戻りを起こす主な理由は、歯が新しい位置に安定するまでに時間がかかるためです。矯正治療では歯に力をかけて移動させますが、このプロセスで歯根膜の繊維が伸び縮みし、歯槽骨の吸収と再生が行われます。治療直後、歯はまだ骨や周囲の細胞に完全に固定されていないため、矯正前の位置に戻ろうとする傾向があります。このため、矯正治療後にはリテーナーの使用が必要となり、それによって新しい位置での歯の安定をサポートします。

リテーナーの役割とは何ですか?

リテーナーの主な役割は、矯正治療後の歯列の位置を維持し、後戻りを防ぐことです。治療によって移動した歯は、すぐにその新しい位置に安定しないため、リテーナーを使用して一定期間、歯を固定します。これにより、歯槽骨と周囲の組織が新しい位置に順応し、歯列の安定を促します。リテーナーの使用期間と方法は矯正治療の種類や個人の状況によって異なりますが、通常は1~3年の使用が推奨されます。

矯正治療後に後戻りが起きやすい人の特徴にはどのようなものがありますか?

矯正治療後に後戻りが起きやすい人の特徴には、以下のようなものがあります。
・リテーナーを装着していない、または不適切に使用している人
・歯並びを悪化させる習慣(指しゃぶり、口呼吸、舌の癖など)を持つ人
・過去に部分矯正を受けた人
・成長段階で矯正治療を受けた人
・矯正治療後に親知らずが生えた人 などです。
これらの条件は、新しい歯列の位置の安定に影響を与え、後戻りのリスクを高める可能性があります。

まとめ

歯のキャラクター

矯正治療後の歯並びの後戻りは、リテーナーの適切な使用、悪い口内習慣の改善、そして定期的な検診により予防可能です。後戻りが起きた際には再矯正することも選択肢の一つですが、日々の予防が最も効果的な対策となります。きれいな歯並びを維持するためにも、矯正治療後のケアを怠らないようにしましょう。

矯正後の後戻りとその防止方法に関して、以下の2つの論文が参考になります。

1. 「Relapse and retention after orthodontic treatment」では、矯正治療後の結果が不安定であり、元の位置に戻る傾向があることを指摘しています。この現象は「後戻り」と呼ばれ、歯周組織や歯肉組織が矯正歯移動により影響を受け、装置が取り外された後に再編成が必要となるため、維持が必要です。矯正治療終了後の適切な保持方法の適用は、後戻りを防ぐために重要です。【Elih, 2017

2. 「The controlled release profile of risedronate emulgel to inhibit relapse movement in orthodontic treatment」では、矯正治療後の後戻りの防止にリセドロネートエムゲルの放出プロファイルを分析しています。リセドロネートエムゲルは、後戻りを抑制するための物質として分析され、制御された放出が観察されました。矯正後の後戻りを抑制するための局所的な薬剤適用の可能性が示されています。【Utari et al., 2022

これらの研究に基づくと、矯正後の後戻りは歯周組織や歯肉組織の影響を受けるため、適切な保持方法の適用が重要です。また、リセドロネートエムゲルのような局所的な薬剤適用による後戻りの抑制も有効な方法として考えられます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科
院長 竹田 亮

2007年 国立長崎大学歯学部卒業。

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梅田茶屋町クローバー歯科・矯正歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック